釜あげ一本勝負のうどん屋さん

第二十一回「釜あげ一本勝負のうどん屋さん」

茹でたてあつあつの麺をダシに浸けながらいただく、讃岐ならではの釜あげうどん。ざるうどんも好きなんだけど、今の時期は特にあったかいのが恋しくなります。

そんな時は、金倉寺から徒歩1分の「長田 in 香の香」へ。
週末は大行列に戦意喪失することもありますが、平日、お昼時を外せば大丈夫。それでもお客さんは入れ替わり立ち替わり来てますけどね。

オープンは平成14年4月14日、12時02分。その日は、なんと徹夜で並んでいたというお客さんもいたそうです。
そう、みんな待っていたんです。美味しいうどんが食べられるのを知っていたから。



半世紀続くうどん屋さんもある中で、平成に誕生した同店がなぜ待望されていたのか―。
女将の宮本憧子さんは、まんのう町の名店「長田うどん」の創業者である先代の味を引き継いだ人です。
「50年続いた味を守りたかった。釜あげうどんいうたら、やっぱりダシやからね」と、女将さん。長田うどんでダシを作っていたおばを手伝いながら、自然と受け継いだ先代の味。多くの常連客がその味を求めていました。

ダシは釜あげうどんの命。大きな徳利から注ぐのも当時のままで、この味とスタイルが同店の象徴にもなっています。



うどん大国・香川において、いわば秘伝のダシだと思っていたのですが…お聞きしたら素材を教えてくれました。
何十年も変わらず三本柱となっているのは、伊吹島のイリコに高知のカツオ、北海道の昆布。過去には弟子を取っていたこともあるし、分量まで公表したこともあったそうです。

でも…。
仕上がりは使い込んだ道具や絶妙な火力があってこそ。やっぱりここでしか生まれない味なんです。

商売を展開していく上で日持ちする冷凍ダシにしないかという提案もあったそうですが、すべてお断りしたとか。この味を守り続けることが、女将さんの信念です。
現在は女将さんからご主人に、そして息子さんへと受け継がれています。女将さんがおばから自然と学んだように、伝統というのはこうして自然と継がれていくものなのでしょうね。



もちろん、麺も昔と変わらない手作業が信念。釜から上がったばかりのふわっとした麺に、ダシがよ~く絡んで美味しいのなんの!
「それぞれ好みの味があるからね。でも釜あげやったらここでという人がいてくれる。嬉しいことやね」

うどん巡りの最後のシメはここと決めている人、遠方からいつもお土産を持ってくる人、東京から年一回夫婦で来る人、そして女将さん自身に会いに来る人も。
長田うどん時代から30年、お客さんとの交流も大切に。早い・安い・うまい!の讃岐うどんだけど、「もう少しゆっくりみんなに食べてもらいたいなぁ」と、優しい笑顔を見せる女将さんなのでした。


釜あげうどんのダシを使って炊いたたこ飯も評判。ちらし寿司やいなり寿司も、おばから受け継いだ味だそうですよ。
そうそう、このダシを家庭料理に使いたいからと定期的に購入する人もいるんですって。湯豆腐や揚げだし豆腐、お鍋のシメのぞうすいにもぴったりなのだそうです。生麺やダシを持ち帰りたい人は、保冷バッグを持参するのがおすすめです。
徒歩1分なら保冷バッグはいらないかな(笑)



今日もできたての釜あげうどんが運ばれていく「長田 in 香の香」。
店内は“香川”の“香り”でいっぱいです。

長田in香の香
http://www.geocities.jp/nagata_in_kanoka/

OPEN 9:00~17:00
CLOSE 水曜、木曜 ※祝日の場合は営業
〒765-0031 香川県善通寺市金蔵寺町本村1180
Tel. 0877-63-5921