地域を支えるヒーローたち vol.7

第二十七回 ~番外編~
地域を支えるヒーローたち vol.7

地元観光で出会った魅力的な人たちをご紹介する「まんなか。番外編」。
今回ご紹介する地域の“ヒーロー”は、善通寺市の人気うどん店「長田in香の香」の女将さんと、同じく善通寺市の商店街で昔からの米屋を営むご主人。SNS全盛期の現代ですが、顔を見て会話を交わすことの大切さを知っているおふたりです。


長田in香の香

これぞ理想の女性!の、人間味あふれる毎日
長田in香の香 女将 宮本憧子さん

 あの「長田うどん」の創業者からダシを受け継ぎ、「長田in香の香」の暖簾を掲げ、もう30年も唯一無二の味を守り続けている女将・宮本憧子さん。70歳を過ぎてなお、現役でお店に立たれているパワフルな女性です。
 なにせ人気店ですから、週末などは早々に麺がなくなることもあるでしょう。でも、営業時間内であればなるべく食べてもらえるよう「玉切れになってもまた(生地を)練るよ!」と言っちゃうところが宮本さんの心意気。夏場に長時間並ぶお客さんたちを見て、その人気ぶりに満足するよりも「熱中症も心配やし気の毒でねぇ」と気遣うところが宮本さんの優しさです。
 そんな宮本さん、きっと忙しいはずなのに毎日がすごく楽しいのだと話します。田舎料理を作るのが好きで、お店のサイドメニューからまかない飯まで腕をふるいます。取材時はちょうど秋だったのですが、「お芋炊いたり栗ご飯作ったりね。栗の皮を剥くのも楽しいんです」とにっこり。手抜きすることばかり考えてしまう私は脱帽しっぱなしです(笑)また、小学4年生の頃から習っていた生け花は、なんと師範も持っていらっしゃるそうでこれまた脱帽!店内でお客さんの目を楽しませている季節の花、実は女将自ら生けていたんですね。
 料理とお花を嗜み、さらには88カ所巡りが趣味のご主人にもたま~にお付き合いする良妻な一面もあり…。宮本さんに会うために足を運ぶ常連さんが多いのは、きっと彼女の人間味あふれる魅力を知っているからでしょう。名は体を表すと言いますが、憧子(とおこ)さん、まさに憧れる要素がいっぱいな方でした。

宮本憧子さんの記事はこちら!
第二十一回「釜あげ一本勝負のうどん屋さん」



人の笑顔が大好きな、健康食の伝道師
モリエ米店 店主 森江一彰さん

 “商店街のお米屋さん”としてご紹介した森江一彰さん。小売店の肝といえる対面販売を続けながらインターネット販売やSNSでの発信にも力を入れ、体に優しい健康食をPRされています。日本人の主食を取り扱っているのですから当然といえばそうなのですが、そもそものきっかけは、ご兄弟のお子さんがアレルギーで悩んでいる姿を目の当たりにしたこと。食に関心を持ち、口に入るものに自然と気を使うようになったと言います。
 その頃に出会ったのが、農業用石膏からできたカルゲンといわれるカルシウム肥料。わざわざ金沢まで足を運び、御年90歳になるカルゲンの第一人者(超元気なおじいちゃん)に会って土作りの重要さを学んだそうです。定期的に発行している手作りの「モリエ新聞」には、食の健康に関する情報が盛りだくさん。地域で開かれる「善通寺まちゼミ」では、玄米・米ぬか活用法や味噌作りなどの講座を通して、お客さんに安心できる食を伝えています。
 「米だけじゃなくて、それを取り巻く環境にも目を向けないとね」と、まさに健康食の伝道師のような森江さん。でも実は、28歳まで県外で演劇に携わっており、プロデューサーとして舞台の脚本などを手がけていました。読みやすいモリエ新聞といい、子どもから大人まで分かりやすい講座といい…妙に納得。
 当時はお店を継ぐなんて考えたこともなく、お父様が倒れた時にまたすぐ戻るつもりで帰省。でも、仕事を手伝ううちに気持ちが変わってきたと言います。「配達先のお客さんたちが、帰ってきてくれたんやなぁって喜んでくれて。それがうれしくてね。今はこれが僕の人生なんだと思えます」。閉めてしまったお店も多い商店街に今も変わらずお米屋さんがあること、そして今の森江さんがあるのは、お客さんや地域の人たちの笑顔のおかげ。その笑顔を守るために、今日も食の大切さを伝えています。

森江一彰さんの記事はこちら!
第二十四回「だんごも人気!商店街のお米屋さん」