地域を支えるヒーローたち vol.6

第二十三回 ~番外編~
地域を支えるヒーローたち vol.6

前回に引き続き、地元観光で出会った魅力的な人たちをご紹介する「まんなか。番外編」です。
今回ご紹介する“ヒーロー”は、善通寺市の「乃木館」を案内してくれた女性自衛官と、同じく善通寺市で繊細な洋菓子を手がける「okasinoie」のパティシエ。仕事柄とても対照的に見えるおふたりですが、それぞれに魅力があって、本当にステキな方たちでした。


安田明美さん

身も心もかっこいい!軍服の似合う女性自衛官。
陸上自衛隊第14旅団 善通寺駐屯地 広報 安田明美さん

 約1600人の自衛官が勤務する善通寺の陸上自衛隊において、女性自衛官はたったの90人ほど。その1人であり現在広報をお手伝いされている安田明美さんは、高校卒業後に入隊し、2等陸士から陸曹長まで登り詰めた人です。曹とは幹部を補佐する立場。善通寺所属の女性自衛官の中で年齢からいうと…いわゆるナンバー2!!「会社でいうお局ですよね(笑)」と謙遜されていましたが、そんな気さくな面も含めて本当に憧れます。
 特殊な職場ですから、入隊された当時は今よりもっと女性が少なく、世間では結婚で退職するのが一般的だった時代。安田さんも結婚し2人のお子さんに恵まれましたが、働くお母さんとしてずっと続けて来られました。お母さんが自衛官なんて、ますます憧れます。
 でも、自衛隊といえば厳しく過酷な訓練を想像しますよね。実際辞めてしまう人も少なくない中、安田さんが乗り越えて来られたのはなぜか。もちろんご家族の支えもありますが、ベースは学生時代に運動部で培った強靭な心身。「チームで協力して目的を達成する、そういう世界が自分には合っていたんですよね」。技術や知識だけでなく、現場でのチームワークが求められる自衛隊。強靭な心身に加え、何より仲間を大切にされているんだなと感じました。
 そんな安田さんの趣味は走ることで、100kmのウルトラマラソンに挑戦されたことも。仲間と走ったあとにお酒を飲むのが大好きだそうです。たくさん飲まれるんですかという質問に「少々」とにっこり微笑む彼女は、高知出身。ざっくばらんで仲間思いのステキな女性でした。
ところで、高知の女性が言う“少々”ってどのくらいなのでしょうか(笑)

安田明美さんの記事はこちら!
第十五回「乃木将軍ってどんな人?〜善通寺の乃木館探訪1〜」
第十六回「乃木将軍ってどんな人?〜善通寺の乃木館探訪2〜」



みんなを笑顔にしてくれる、アイデアあふれるスイーツ男子。
okasinoie オーナーパティシエ 中山雅史さん

 善通寺市の駅前通りで、ひと際目を引くかわいい洋菓子店。こちらのオーナーパティシエである中山さんは、優しい声とやわらかな物腰がお店のオシャレな雰囲気にぴったりの男性。店頭には実のお姉さんが立たれていますが、「一人で作るつもりで店を出したから」と弟子を取ることもなく、メニューの考案から製作、仕上げまですべての作業をご自身がこなしています。
 当然ながら、たまの休日も製造日に充てる日々。出来上がりをイメージしてから素材や味を考案することもあれば、味からデザインを形づくることもあり、本当に朝から晩まで洋菓子のことばかり考えている“スイーツ男子”なんです。
 中山さんは元和食の料理人…というのはお店の紹介でも触れましたが、そもそものきっかけは「好きというより得意なことだった」と言います。学生時代は家庭科が得意で、先生にも「君うまいね!」と褒められた。バイト先の飲食店では「おいしそうに見せるのがうまいね!」と感心された。そんな数々のエピソードが今の中山さんのベースになっています。パティシエを目指す人はケーキが大好きで、ケーキに惚れ込んでいると思っていた私。でも、中山さんはプライベートでケーキを食べたい!とは思わないそうで、これが“好きより得意なこと”なのかな。だからこそ広い視野でさまざまなアイデアを生み出し、お客さんのハートを虜にする「okasinoie」らしいケーキが出来上がるのかもしれません。
 といっても職人の世界はやはり厳しく、スイーツのように甘くはありません。人並み以上の体力も必要だし、繊細さも求められる過酷な仕事です。得意なことを生業にした中山さんですが、「小さなひとつに特別感を込めたい」と話す姿を見ながら思いました。ケーキを目にした時のワクワク感とか食べた時の笑顔とか。その小さなひとつがもたらす感動が好きなんだろうなって…。

中山雅史さんの記事はこちら!
第十九回「小さなスイーツに込められた特別感」