止観について

天台大師さまのいう「止観」とは、「止」と「観」の2法をいいます。
「止」と「観」の2法というのはどういうものでしょうか。


天台大師坐像

天台大師さまは「止」と「観」を次のように説明されます。

「止」とは一切の迷いから離れた究極の精神状態である禅定のことであり、
「観」とは迷いを生みだす心そのものを冷静に観察する智慧のことである。
この2法は車の両輪、鳥の両翼と同じで、どちらか一方に偏ると、誤った考えに陥ってしまうことになる。

つまり、ただ坐禅の修習を専らとして、智慧を修習を怠っていると、さとりを得るどころか誤った考えばかりが起こり、迷いの世界から抜け出すことができない、というのです。
そのため、「止」と「観」、この2法を同時に正しく学ぶ必要がある、と天台大師さまはおっしゃいます。
それでは、正しい智慧である「観」の修習は、どのように行えばいいのでしょうか。
天台大師さまは次のようにおっしゃいます。

止観はさまざまな方法で修習することができるが、坐禅が最も優れたものであるのだから、坐禅に即して止観を修習するのが良い。

ただただ坐禅を修習するのではなく、心の動きをしっかりと観察しながら坐禅を行いなさい、とこのようにおっしゃいます。
またその方法として、禅定の段階に応じて5つの例を挙げられています。

1. 初心のうちは乱れがちな心を打ち破ろうと止観を修習する
2. 心の浮き沈みを正そうと止観を修習する
3. 心の動きに合わせて止観を修習する
4. 禅定中の微細な心の誤りを正そうと止観を修習する
5. 禅定と智慧を均整にするために止観を修習する