歴史・文化
鉄道発祥の町、多度津町の昔話~後編~
「鉄道発祥の町、多度津町の昔話~後編~」
先週に続いて鉄道発祥の町・多度津町でその歴史を紐解く昔話編です。
後編では、蒸気機関車が音を立てて走っていた頃の暮らしぶりをちょっと覗いてみることに…。
讃岐鉄道が発足して15年。私鉄から国鉄となり、車両修繕工場は多度津工場としてパワーアップ。町はいわゆる“鉄道マン”たちであふれ、いよいよ国鉄全盛期の到来です。
当時の様子がよく分かるからと『多度津工場100年史』を見せてくれたのは、前回でもお話を伺った多度津町立資料館館長の川元紀惠さん。100年史には、讃岐鉄道の初代機関車も載っていました。
こちらはなんとドイツ製。まさに文明開化の音がする♪
JR多度津駅のSLもそうですが、蒸気機関車といえば黒煙を巻き上げて走る姿をイメージします。
「機関車が通る時間になったら、みんな急いで洗濯物を取り込んむんですよ。干しっぱなしだと煤煙(※石炭の燃焼による煙とスス)が飛んで汚れるから」。これは、当時小学生だった川元さんの印象に強く残る日常の一コマ。髪の毛にもしょっちゅう煤煙が付くのだと苦笑していました。
音もすごかっただろうし、洗濯物が乾く暇がないなんてけっこう迷惑な話です。
でも、鉄道は文明の最先端。そこで働く人はもちろん、きっと町全体が誇りを持っていたのでしょうね。
子どもの頃の記憶では、クラスメイト約50人のうち半数以上のお宅が多度津工場に勤務していたとか。町外からも多くの働き手が集まるため、朝の出勤時間になると、多度津駅から工場へと続く道は鉄道マンがずらりと列を作るのだそうです。
さすが、名実共にザ・国鉄の町!
「長い列の間を割って登校していましたね」。これもまた懐かしい日常の一コマです。
そうそう。国鉄一家には家族パス的なものがあり、工場にあった大きなお風呂が開放されていたみたい。運賃も安くなるので、よく旅行していたなんてうらやましい話もありました。
ちなみに、切符は当初からあまり変わらない感じです。絶対なくす人いたと思う(笑)
港町の風情を感じる昔ながらの入り組んだ町並み。そして、海に隔たれた島国に文明開化の波紋を起こした多度津七福神、それを大きな波に変えた鉄道マンたち…。
歴史ロマンあふれる多度津町に、行ってみたくなりませんか?
七福神の一軒「合田邸」にはファンクラブがあるほどで、日時限定で公開もされています。金の間・銀の間と呼ばれる部屋があるそうで、豪商の暮らしぶりに触れることができます。
また、鉄道の日(10月14日)を記念して毎年開かれる「きしゃぽっぽまつり」では、多度津工場内部も公開。普段は団体での工場見学しか受け付けていないため、探検できる貴重なチャンスです。
『多度津工場100年史』は、調べてみたら「多度津町立明徳会図書館」にもありました。
今回ご紹介した情報やエピソードはほんの一部なので、もっと知りたい!という人は手に取ってみるのもおもしろいと思います。
もちろん、多度津町立資料館(写真)にも多度津の魅力を伝える史料が満載。同館では定期的に企画展が開かれており、5月2日~31日までは「我が家のお宝展」が開催されます。なんてったって“我が家の”ですから、珍品も期待できますね!
多度津町立資料館
OPEN 9:00~17:00
CLOSE 月曜(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始
〒764-0002 香川県仲多度郡多度津町家中1-6
Tel. 0877-33-3343
川元さんの記事はこちら!
地域を支えるヒーローたち vol.18 多度津町立資料館館長 川元紀惠さん