おかるてんさんのおしるし

『おかるてん便り vol.2』ができました。
テーマは「初まいり」。
お母さんを見つめる赤ちゃんの笑顔が印象的な表紙になりました。



赤ちゃんのおでこにあるおしるし。
祈願の最初にハンコで押すのですが、ビックリされる方もいらっしゃいます。
このおしるしは「あやつこ」といいますが、詳しいことは『おかるてん便り』でも触れていません。
以前の金倉寺のブログで触れたことはありますが、いい機会なのでこちらにまとめておきます。

実はこのあやつこ、歴史は非常に古く、漢字の「産」の語源にまで遡ります。
『成り立ちで知る漢字のおもしろ世界 人編』の「産」の項には、次のような説明があります。

子どもが生まれると、すぐさま邪霊にその命が穢されないように、早速そのひたい(厂)に魔除けの印(文)をつける。
そのことをあらわすのが「産」である。


日本では平安時代にはあやつこの風習が見られ、もともとは神聖なものをあらわす「×」を記したそうです。
時代がくだるにつれ、「×」から「犬」、そして男児は「大」、女児は「小」と書くようになりました。
このような変化をした秘密は「あやつこ」という呼び名にあります。

「あやつこ」はもともと「あの奴(やつこ)」という言葉から来ています。
「奴」とは「人や動物を蔑んでいう言葉」だそうで、「あの奴」とは「人でないもの」を意味します。
つまり「あやつこ」とは、赤ちゃんを「人でないものにしてしまう」行為です。
そうすることで、この子は人ではないからと邪霊をだまし、取り憑かれないようにしたのでした。
そこで本来神聖なものを表す「×」が転じて、身近な存在であった「犬」と記すようになったみたいです。

金倉寺では、おかるてんさんのおしるしを押し、「この子はおかるてんさんの子どもですから邪霊は取り憑かないでください」とお祓いをします。
もともと恐ろしい鬼であったおかるてんさん。
さらにその子どもは500人とも1000人とも言われています。
そんなおかるてんさんににらまれれば、邪霊もたまったものではありません。
お子さまの健やかな成長は約束されたようなものですね。