十三仏への発展

昨日はイベントの紹介があったため、お盆企画の「先祖供養」特集をお休みしました。
今日は、盆経4日目。
いよいよ明日午前1件のお参りで今年の盆経は終わりとなりました。

と、いうことで?今年のお盆企画「先祖供養」特集も今日をもって最終話。
4日目は「十三仏への発展」です。


さて、再び日本に場面を戻しましょう。
インドの輪廻思想、さらに中国で発展した十仏信仰は、人の死が神として再生するための過程と考えていた日本人にとって、受け入れやすいものであったでしょう。
時代は鎌倉時代まで下り、日本では十仏に、七回忌(阿閦如来)、十三回忌(大日如来)、三十三回忌(虚空蔵菩薩)の三仏を加えた十三仏へと発展していきます。
これには先述の祖霊(それい)信仰が深く関わってきます。

死んだばかりの人の魂というのは安定せず、災いをもたらす荒魂(あらみたま)の状態です。
その魂を供養することで、魂は次第に浄化され、安定した和魂(にぎみたま)となり、神へと昇華すると考えられていました。
つまり先祖の魂を供養することで、和魂となり神として子孫を守り繁栄をもたらしてくれるというのが、祖霊信仰です。

先程はこの期間を「一定の歳月」と述べましたが、一般的には33年、または50年と考えられていました。
この期間を経て、「弔い上げ」と言われる最後の祭祀を執り行い、祖霊が神へと昇華されると考えられていました。
ここで重要なのは、「弔い上げ」の期間が一般的に33年であった、ということです。
仏教の十三仏信仰でも「弔い上げ」は三十三回忌とされており、日本で十三仏信仰が受け入れられたのは、民間に根強く残っていた祖霊信仰と合致したからでしょう。

三十三回忌の本尊は、虚空蔵菩薩です。
虚空とは、無限の広がりを持つ宇宙そのものであり、その無限の智慧と功徳をその中に蔵しているもの、それが虚空蔵菩薩です。
この虚空蔵菩薩を供養するということは、どういうことでしょうか。

先祖神は肉体を離れ、神として大自然、宇宙そのものとなりましたが、虚空蔵菩薩は宇宙そのものを内包しています。
これは、先祖を供養する自分自身の中に、先祖を含め宇宙そのものが納まっていることを意味するのです。
つまり、先祖を供養するということは、自分自身を供養すること。
自分の中に脈々と受け継がれた先祖の想いを感じ、自分がいかに大切で尊い存在であるかを知ること、また同じく他の全ての人やモノ、その一切が大切で尊い存在であることを知るためのもの。
それが先祖供養の本来の意義なのではないでしょうか。


追記
以上、4日にわたり書きました「先祖供養」、お付き合いいただきました皆さまに感謝いたします。
今回、私も檀家さんをお参りしていますと、多くお家で「お寺のことはじいちゃん or ばあちゃんの担当」となってるようで、皆さん次の世代がキチンとしてくれるのか、と心配されていました。
そうおっしゃるご本人も、ご自身のご両親が亡くなられてから、法事を執り行うようになったと笑いながらおっしゃってましたが(笑)
ただ多くの家庭で、先祖を供養できるのは子孫のみです。
ご先祖さまを祀り、語り、自分に脈々と流れるご先祖さまの血を感じ、その血を守ること。
本当に尊いことだと思います。
お盆のような機会だけでも結構です。
少しでもご先祖さまのことに心を寄せていただければいいな、と思いこの文章を再掲載いたしました。
それが本当の意味で、ご先祖さまが皆さまにとっての神さまになることだと思います。