「未来の住職塾」受講を終えて

昨年1年を通じて、「社団法人 お寺の未来」が主催する「未来の住職塾」に参加してました。
名前の通り、次世代の住職を育成するための講座ですが、お坊さんとしてお葬式のことや加持祈祷の方法を教わるのではなく、マーケティングや財務など、寺院経営者として必要な知識を学ぶ講座です。
内容は「外部環境分析」、「使命・ビジョン」、「マーケティング」、「財務」、「リーダーシップ」をケーススタディやワークショップを通じて5回の講座で学び、最後の第6回で自坊の「寺業計画」を発表します。
1月15日(月)がその発表の日であり、またその発表後の指摘や評価を受けて課題最終提出がつい先日終わりました。

私がこの塾を受講したきっかけは、これまでなんとなく手探りで行ってきた金倉寺での僧侶としての活動を今一度確認したいという思いからでした。

私はもともと在家の人間であり、小さい頃からお寺やお坊さんに興味があったというわけで訳でもありません。
ただ自営業で経営というものにたずさわりながら、経営者として自分の信念を支えるもの、そんなものを模索していた時に仏教と出会いました。
さらにたまたま妻の実家がお寺であったこと、事業継続をどうするか悩んだ時に住職から金倉寺の後継者として僧侶にならないかとの誘いがあり、僧侶になる道を選択しました。

ですので、僧侶は何をすべきかというものが分かりませんでした。
もともと地域コミュニティに興味があり、お寺はその拠点として地域社会に貢献できるのではないか、というくらいのぼんやりとしたイメージのみでした。
また金倉寺は年中行事は多いものの、檀家が多い訳でもなく、普段の仕事はほとんど何もありません。
四国霊場ということで、お遍路さんは沢山参拝にいらっしゃいますが、その応対をする者はすでにいるため、私に与えられた仕事はたまの法事の手伝いくらいでした。

そこで前職を活かし、ホームページの作成や寺報の作成などをし、檀家さんやお遍路さんに紹介していく中で、たまたま「安産祈願」に対する潜在的な需要が多いことに気づき、現在にいたります。
これまでで僧侶となりちょうど10年、私のしてきたことはこれでよかったのか、それを振り返り、そしてこれからの金倉寺はどうあるべきなのかを考える機会になればいいと思い受講を決めました。

「未来の住職塾」の本質は自坊の寺業計画を考えるということにあると思います。
その寺業計画を考えるための道具として前5回の講義があり、この期間を通じて自坊のことをより深く多面的に知ることができます。
その中で気づきがあり、問題解決があり、それを自分の中で反芻すること、このきっかけをくれるのが松本紹圭塾長、井出悦郎代表、遠藤卓也先生といった住職塾の講師陣です。
これまで一般企業を始め、数多くの寺院運営にも関わってこられたので、色々な寺院の実例や取り組み、時には寺院外の事例も含め紹介くださいます。
また自坊の気づきや問題解決に繋がるよう、講義後は講義内容を自坊に当てはめた上で取り組める宿題をたっぷりと用意してくれています(笑)
これに取り組むことで自坊の問題や檀信徒の潜在的な需要を読み取り、今後の自坊に必要な施策が見えてくるようにカリキュラムが組まれています。

また「未来の住職塾」の魅力は、やはり同地域で同じく問題意識を持ち、これからのお寺と檀信徒の在り方を考える仲間ができるということです。
通常の寺院活動では決して出会えることができない宗派をこえた本当の仲間ができます。
一言にお寺といっても多種多様であり、個性派の多い香川クラスでは本当に沢山の方々に刺激をいただきました。

「未来の住職塾」受講を通して、1年前は頭の中のイメージでしかなった「これからの金倉寺」が、寺業計画という形でしっかりと地に足がついたものとなりました。
私にとっては特に財務が肌に合ったようで、これからの金倉寺の姿を数字を通して見ることで、よりリアルに、明確にイメージできるようになりました。
またその予算を達成するためには、何をすればいいか、まずは何をなすべきかが見え、行動にも繋がります。
1年前までは「こうしたらいいのかな?」とか「これが重要なんじゃない?」なんて疑問符を付けながら感覚でおこなってきた寺業運営と比べると雲泥の差です。
もちろん、寺業計画も実行しなければただの絵空事なので、今後はしっかりと取り組むことが必要です。

そのためにもここで宣言したいと思います。
金倉寺の使命は、

「生」という喜びの時、「家族」で過ごす平穏な時、「死」という悲しみの時、
家族を想い子の幸せを願う時、嬉しい時、悩んだ時、辛い時、
その気持ちを受け止め、寄り添える場を提供する。


1年の学びを通じて、寺ができることは「場の提供」でしかないと思いました。
そこにカラーをつけるのが住職や寺族ですが、これを一代ごとに変えてしまうのでは、寺は社会から必要とされなくなるでしょう。
これまで1200年以上の金倉寺の歴史の中で、関わってきた全ての方々が大切にしてきた想いをしっかりと次代へ引き継ぐ、今年はその足がかりとなる1年目にしたいと思います。

そんなきっかけをくれた「未来の住職塾」ですが、来年度の募集が始まっています。

未来の住職塾 第7期募集要項
http://www.oteranomirai.or.jp/juku/regular_course/requirements/


また受講を悩んでいる方のために「一日体験教室」も開催しています。
現行の「未来の住職塾」はこの第7期で終了となり、今後はまだ未定とのことです。
もしご興味がある方は最後のチャンスとなりますので、「一日体験教室」を通じて受講を検討されてはと思います。

卒業後はOBが集う「未来の住職塾サンガ」がありますので、これをきっかけにぜひ1人でも多くの仲間が増えますことを楽しみにしています。
この記事が「未来の住職塾 第7期」受講を考え、その評価や評判が気になる方の一助になれば幸いです。

最後になりましたが、このような機会をくれました「未来の住職塾」並びに共に学んだ第6期香川クラスの皆さまの今後のご活躍を心より祈念しております。